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RAGとは?AIに自社データを答えさせる仕組みを図解で解説

RAGとは?AIに自社データを答えさせる仕組みを図解で解説

オープンソースラボ編集部2026年6月12日

RAG(Retrieval-Augmented Generation)とは、AIが回答を生成する前に「関連する文書を検索して参照する」仕組みのことです。これにより、ChatGPTのような汎用AIが知らない社内情報や最新情報も、正確に答えられるようになります。この記事では、非エンジニアの方でも理解できるよう、たとえ話と図解で仕組みをていねいに解説します。無料で試せるOSSツールの紹介や、よくある誤解の整理まで一気にお伝えします。

DifyのGitHubリポジトリ画像

RAGとは?一言でいうと「カンニングOKのAI試験」

普通のAI(ChatGPTなど)は、事前に学習したことしか答えられません。社内の規定書、最新の商品マニュアル、先月の売上データ——そういった情報は学習されていないので、尋ねても「知りません」か、もっとひどい場合は嘘をついてしまいます(これをハルシネーション=AIが事実ではない内容を自信満々に答えてしまう現象、といいます)。

RAGはこの問題を解決する仕組みです。イメージしやすいたとえ話で説明しましょう。

試験で「本持ち込み可」の状態がRAGです。 参考書なしで全部暗記して答えるのが普通のAI。RAGは試験中に正しい参考書を素早く開いて、そのページを読みながら答えを書きます。答えの根拠が手元にあるので、でたらめを言いにくくなります。

RAGという名前は「Retrieval(検索)」「Augmented(強化された)」「Generation(文章生成)」の頭文字です。「検索で強化された文章生成」と覚えると分かりやすいです。

RAGの仕組みをやさしく解説(3ステップ)

RAGの処理は大きく3つのステップに分かれます。専門用語も出てきますが、その都度かみ砕いて説明します。

ステップ1:文書をベクトル化して保存する

まず、社内の文書(PDF・Word・CSVなど)をAIが検索しやすい形に変換して保存します。この変換をベクトル化といいます。

「ベクトル」と聞くと難しそうですが、要は文章の意味を数字の配列に変換したものです。「犬」と「猫」は違う言葉ですが意味が近いので、数字に変換したときも近い値になります。この性質を使って「似た意味の文章を素早く検索」できるようにしています。変換した数字を保存する専用のデータベースをベクトルデータベースと呼びます。

ステップ2:質問に近い文書を検索する

ユーザーが質問を入力すると、その質問もベクトル化されます。次に、保存済みのベクトルデータベースの中から「質問に意味が近い文書の断片」を素早く取り出します。

ステップ3:文書を参照してAIが回答を生成する

取り出した関連文書を「参考資料」としてAIに渡します。AIはこの参考資料を読んだうえで回答を生成します。参考資料に書いてある内容を根拠に答えるので、ハルシネーションが大幅に減ります。

ステップ処理内容たとえ話
①文書の保存文書をベクトル化してDBへ参考書に付箋とインデックスをつける
②関連検索質問に近い文書断片を取得試験中に関係するページを素早く開く
③回答生成参考資料を読んでAIが回答そのページを見ながら答えを書く

RAGで何ができるか?具体的なビジネス活用例

RAGの仕組みを理解したところで、実際にどんな場面で役立つかを見てみましょう。

社内FAQ・問い合わせ対応の自動化 就業規則、経費精算のルール、システムの操作マニュアルなどを読み込ませると、従業員からの質問にAIが自動回答できます。「有給は何日前に申請すればいい?」「経費の領収書の上限は?」といった質問に、規定書を根拠に答えてくれます。

営業・提案資料の即時検索 過去の提案書、製品仕様書、競合比較資料などを取り込んでおくと、「A社向けの提案では価格をどう説明したか」「製品Bの保証期間は何年か」を自然な言葉で検索できます。

カスタマーサポートの品質向上 商品マニュアルや過去のクレーム対応事例をRAGに組み込めば、オペレーターの回答品質が均一化できます。

法務・コンプライアンス確認 契約書や社内規程を取り込んでおき、「この条項は標準約款と違う箇所があるか」などを確認する補助ツールとして使えます(最終確認は専門家が必須)。

いずれのケースも、「AIが一般知識で答える」のではなく「自社の文書を根拠に答える」点がポイントです。

無料で試してみる方法:代表的なOSSツール3選

RAGFlowのGitHubリポジトリ画像

RAGを試すために、プログラミングなしで使えるオープンソースツールが複数あります。どれも無料で使え、自社サーバーで動かせばデータを外部に渡さずに済むため、情報漏えいのリスクを抑えられます。

① Dify — ノーコードでRAGアプリを作れるプラットフォーム

Difyは、ドラッグ&ドロップの画面操作だけでRAGチャットボットを作れるプラットフォームです。GitHubスター数は144,875(2025年時点)と国内外で非常に人気が高く、OpenAI・Anthropic・Geminiなど主要なAIモデルを切り替えて使えます。PDFや社内文書をアップロードするだけでナレッジベースが構成され、コードを書かなくても自社向けAIアプリを作れます。クラウド版は無料プランから使用できます。

② RAGFlow — 複雑な文書の理解に特化したRAGエンジン

RAGFlowは、表・画像・複雑なレイアウトを含むPDFの解析に強みを持つRAGエンジンです。GitHubスター数は82,474、ライセンスはApache-2.0(商用利用も可能)。「どの文書の何ページを根拠に答えたか」を引用付きで表示できるため、回答の信頼性確認がしやすいのが特徴です。契約書や技術マニュアルなど、複雑な構造の文書を扱いたい企業に向いています。

③ AnythingLLM — インストールするだけで使えるオールインワン

AnythingLLMのGitHubリポジトリ画像

AnythingLLMは、デスクトップアプリをインストールしてPDFやWordを放り込むだけで、すぐにRAGが使えるツールです。GitHubスター数は61,452、ライセンスはMIT(商用利用可)。ローカルPC上で完全にオフラインで動かすことも可能なため、「絶対にデータをインターネットに出したくない」という組織にも対応できます。技術チームがいない中小企業でも導入しやすい設計です。

ツール名GitHub ⭐ライセンス特徴向いている人
Dify144,875OtherノーコードでAIアプリ構築多機能なAIアプリを作りたい
RAGFlow82,474Apache-2.0複雑文書の高精度解析契約書・マニュアル処理
AnythingLLM61,452MITインストールのみ・オフライン可手軽に試したい・情報漏えいが心配

3ツールのGitHubスター数の伸び比較

主要RAGツールのGitHubスター数推移比較

上のグラフはDify・RAGFlow・AnythingLLMの3ツールのGitHubスター数の推移です。いずれも2023〜2024年にかけて急激に伸びており、RAG関連ツールへの注目度が世界的に高まっていることが分かります。Difyが最も多くのスターを獲得していますが、RAGFlowも急成長中です。

よくある誤解・注意点(デメリットも正直に)

RAGはとても便利な技術ですが、万能ではありません。導入前に知っておきたい注意点を正直に整理します。

誤解①:RAGを使えばAIは嘘をつかなくなる RAGによってハルシネーションは大幅に減りますが、ゼロにはなりません。参考資料に書いてある内容を取り違えたり、関連する文書が見つからなかったりした場合は誤った回答をすることがあります。重要な判断には必ず人間のチェックが必要です。

誤解②:どんな文書でもそのまま使える スキャンしただけの画像PDF、手書き文書、複雑な表形式のExcelは、精度が落ちやすいです。OCR(画像をテキストに変換する処理)が必要なケースもあり、文書の品質が回答精度に直結します。

デメリット①:文書の整備・管理コストがかかる RAGの回答精度は「取り込む文書の質」に大きく依存します。古い情報や矛盾する内容が含まれていると、AIもそれをもとに回答してしまいます。文書のメンテナンスを継続的に行う体制が必要です。

デメリット②:クラウド版ではデータが外部サーバーに送られる Difyのクラウド版など、SaaS形式のサービスでは文書データが外部サーバーに送信されます。機密性の高い文書を扱う場合は、セルフホスト版(自社サーバーで動かす方式)を選ぶか、法務・情報システム部門と相談が必要です。

デメリット③:大量文書の処理には時間とコストがかかる ベクトル化にはAPIコスト(OpenAI等を使う場合)や処理時間がかかります。数万ページの文書を一度に処理する場合は事前にコスト試算をしましょう。

よくある質問

Q. RAGとファインチューニングは何が違うのですか?

どちらも「AIに自社の情報を使わせる方法」ですが、アプローチが全く異なります。ファインチューニングはAIのモデル自体を追加学習させること(参考書の内容を丸暗記させる)、RAGはモデルを変えずに毎回文書を参照させること(試験のたびに参考書を持ち込ませる)です。ファインチューニングは学習コストが高く更新も大変なため、更新頻度の高い社内文書には一般的にRAGの方が向いています。より詳しくはLangChainなどのフレームワークのドキュメントも参考になります。

Q. RAGの構築にプログラミングの知識は必要ですか?

DifyやAnythingLLMのようなノーコード・ローコードツールを使えば、プログラミング知識がなくても基本的なRAGシステムを構築できます。一方、より細かい調整(チャンクサイズの変更、検索アルゴリズムのカスタマイズなど)を行いたい場合は、LangFlowLangChainのような開発者向けツールが必要になります。

Q. 日本語の文書でもRAGは機能しますか?

はい、日本語対応のRAGシステムは十分に実用的なレベルになっています。ただし、日本語の形態素解析(日本語を単語に分割する処理)への対応状況はツールによって異なります。DifyやRAGFlowはいずれも日本語文書に対応しており、日本語での検索・回答生成も問題なく動作します。

Q. RAGのコストはどのくらいかかりますか?

OSSツール自体は無料ですが、AIモデルのAPI利用料(OpenAIなど)が別途かかります。文書のベクトル化には「text-embedding」系のAPIを使いますが、OpenAIの場合は100万トークンあたり約0.02〜0.13ドルと比較的安価です。チャット回答生成には使用するモデルに応じたコストがかかります。コストを抑えたい場合はllama.cppを使ってローカルLLMを動かす方法もあります。

まとめ:RAGは「自社の文書を根拠に答えるAI」を作る技術

RAGとは、AIが回答を生成する前に関連文書を検索・参照することで、ハルシネーションを減らしながら自社固有の情報に基づいた回答を可能にする技術です。

  • 普通のAI:学習済みの一般知識だけで答える → 社内情報は答えられない
  • RAGを使ったAI:質問のたびに関連文書を検索して参照しながら答える → 社内情報に基づいた回答が可能

Dify・RAGFlow・AnythingLLMのような無料OSSツールを使えば、プログラミングなしでもRAGシステムを試すことができます。まずは社内の小さな文書セット(例:よくある質問集10本)でテストしてみて、精度や使い勝手を確認するところから始めると良いでしょう。

RAGは「AIが嘘をつく」という最大の課題に対応する現時点での主流のアプローチです。自社データをAIに活用させたいと考えているなら、ぜひ一度試してみてください。

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