tracecatとは?AIネイティブなセキュリティ自動化基盤の使い方・ライセンス・導入ガイド
オープンソースラボ編集部 ・ 2026年10月6日
tracecatとは
tracecatは、チームとAIエージェント向けのオープンソース・セキュリティ自動化基盤です。セキュリティオペレーション(SecOps)チームがAIを活用して脅威検知から対応まで自動化できる統一プラットフォームとして設計されています。
セキュリティ運用では、アラート対応やインシデント調査に膨大な時間を要します。tracecatはAIエージェントにこれらのタスクを委譲し、人間のアナリストが高度な判断に集中できるようにする仕組みを提供します。
基本情報
- ライセンス: AGPL-3.0(オープンソース)※一部Enterprise Edition機能は別途ライセンス
- 開発言語: Python
- GitHub:TracecatHQ/tracecat↗(2026年10月6日時点で累計⭐3,824)
- 最新バージョン: 1.0.1(2026年9月18日公開)
主な機能と特徴
tracecatのREADME↗では、以下4つの主要機能を紹介しています。
AIエージェントと推奨スキルの構築
カスタムプロンプト、ツール、MCP(Model Context Protocol)、スキルを組み合わせてAIエージェントを構築できます。エージェントにセキュリティツール群へのアクセスを与え、調査タスクを自動実行させる方式です。
ケース管理による対応の追跡
インシデントをケースとして一元管理し、AIエージェントによる自動調査結果(判定、タイムライン、IoC検出、証拠)を記録します。人間のアナリストはこれらのエージェント作成データを基に最終判断を下します。
ワークフロー自動化
有向非環状グラフ(DAG)形式でセキュリティプロセスを定義し、複数のステップを順序立てて実行します。バックエンドはTemporal↗に基づき、スケーラビリティと耐障害性を備えています。
構造化データの保存と照会
テーブル機能で、エンティティ情報や脅威インテリジェンスなど構造化されたセキュリティデータを保存・検索できます。
統合とコネクタ
tracecatは100以上の事前構築済みコネクタと50以上のホストされたMCPサーバー↗を提供し、SIEM、エンドポイント保護、脅威インテリジェンスプラットフォームなど既存セキュリティツールとの連携を可能にします。
また、Claude Code、GitHub Copilot、その他のAIコーディング環境からtracecatのMCPツールを呼び出すことで、プロンプトから直接自動化を実装できます。
ライセンスと商用利用
tracecatはAGPL-3.0ライセンス↗下で配布されていますが、以下の点に注意が必要です。
オープンソース版の範囲
メインリポジトリのコードはAGPL-3.0の下で自由に利用、改変、配布できます。ただし改変物を運用環境で使用する場合、その改変コードも同じライセンス下で公開する必要があります。
Enterprise Edition(EE)の制限
packages/tracecat-eeディレクトリ内のコードと、EE機能をゲートするコードはTracecatの有償ライセンス↗下にあります。これらは無許可で商用利用、再配布、運用環境での使用ができません。
Enterprise Edition の主な追加機能は以下の通りです。
| 機能 | 説明 |
|---|---|
| マルチテナント | 複数チームと開発・本番環境をワークスペースで分離 |
| アクセス制御 | RBAC、ABAC、OAuth2.0スコープによる細粒度の権限管理 |
| 承認フロー | 機密ツール呼び出しの人間による審査・承認(Slack、メール連携) |
| バージョン管理 | ワークフロー、エージェント、スキーマをGitHub等と同期 |
| 監視・メトリクス | ワークフロー実行、エージェント動作、ケース解決の可視化 |
Enterprise Editionはマネージドクラウド(US/EU)またはセルフホスト↗で利用でき、デモ申し込みで詳細を確認できます。
導入方法
対応環境と要件
tracecatは以下の環境で動作します。
- クラウド: Tracecat Cloud(マネージド)
- セルフホスト: Docker、AWS Fargate、Kubernetes
- 特殊環境: エアギャップ環境での運用にも対応
インストールと起動
公式ドキュメントに詳細な導入手順が記載されていますが、Docker を用いたセルフホスト導入が最も一般的です。
詳細は Tracecat公式ドキュメント↗ を参照してください。
前提技術
バックエンドがPython(FastAPI)、フロントエンドがNext.js(TypeScript)で構成されており、データベースはPostgreSQL、オブジェクトストレージはS3互換環境が必要です。セルフホスト時はこれらの構築と運用知識が必要になります。
活用シーン
セキュリティ運用の自動化
毎日のアラート分類や初期調査をAIエージェントに委譲し、高リスク案件を人間のアナリストへ優先的に回す仕組みが作れます。
インシデント対応の加速
エージェントが複数ソースから並行して脅威情報を収集・整理し、アナリストの判断時間を削減します。
脅威インテリジェンスの自動運用
外部脅威フィードをテーブルに取り込み、ワークフローで定期的に更新・検証するプロセスを構築できます。
コンプライアンス監視
セキュリティイベントをケースとして自動記録し、監査ログとしてSIEM へ直接エクスポート↗できます。
デメリットと注意点
AGPL-3.0の制約
オープンソース版を改変して本番運用する場合、改変内容の公開が義務付けられます。セキュリティ設定や企業固有のロジックを非公開にしたい場合は、Enterprise Editionの検討が必要です。
運用スキルの必要性
セルフホスト導入時は、Python、PostgreSQL、Kubernetes などの環境構築と運用経験が求められます。マネージドクラウドで軽減できますが、カスタマイズには開発リソースが必要です。
エージェント精度への依存
AIエージェントの調査結果精度は、プロンプト設計と連携ツールの信頼性に左右されます。幻覚(Hallucination)や誤検知を完全には排除できないため、本番利用には「人間による最終確認」のプロセスが必須です。
統合ツール数の限界
50以上の事前構築MCP サーバーがありますが、社内の独自セキュリティツールや小規模ベンダーツールとの連携が必要な場合は、カスタム統合開発が発生する可能性があります。
よくある質問
オープンソース版とEnterprise版の主な違いは何ですか?
オープンソース版はシングルテナント向けで、複数チームの分離、細粒度アクセス制御、ワークフローのGit連携、人間による承認フロー、メトリクス監視が含まれません。小規模チーム向けの基本機能に限定されます。
クラウド版とセルフホスト版どちらを選ぶべきですか?
クラウド版(Tracecat Cloud)は運用手間が最小で、Enterprise Edition機能を即座に利用できます。セルフホストはカスタマイズ性が高く、エアギャップ環境や規制対応が必要な組織に適します。ただし構築・保守コストは大きくなります。
既存のSIEM・SOAR製品との使い分けは?
tracecatはAIエージェント向けの自動化基盤に特化しており、従来のSIEM(ログ集約)やSOAR(ワークフロー)とは役割が異なります。既存SIEM からアラートを取得し、tracecatで自動調査→判定、結果をSIEMへ返すという組み合わせが一般的な使用パターンです。
オープンソース版を本番利用する際の注意点は?
AGPL-3.0ライセンスに基づき、改変内容は公開義務があります。またマルチテナント機能や企業向けアクセス制御がないため、組織内での安全な運用設計が必要です。
まとめ
tracecatはAIエージェントをセキュリティ運用の中核に据える新しいアプローチを提供するオープンソース基盤です。アラート対応やインシデント調査の自動化により、限られたセキュリティ人材をより戦略的な業務へシフトさせることができます。
导入を検討する際のポイント
- スケール: シングルテナント(オープンソース版)か マルチテナント(Enterprise版)か
- 運用体制: マネージドクラウドか自社インフラか
- ライセンス: AGPL-3.0の制約を受け入れるか
- 既存ツール連携: 必要なMCPサーバーが用意されているか
特にセキュリティ人員が限定的な中堅・小規模企業や、セキュリティ自動化を急速に進めたいチームにとって、検討する価値があるツールといえます。
詳しくは公式ドキュメント↗やDiscord コミュニティ↗で最新情報を確認できます。
関連ツール
tracecatと組み合わせて使われることが多いワークフローエンジンとしては、n8nによる汎用自動化や、airflowによるデータパイプライン連携があります。また個人向けの軽量自動化ならhuginnも参考になります。
関連リンク・公式情報
ここで紹介したツールの一次情報(公式サイト・ソースコード)と、オープンソースラボ内の関連ページをまとめました。導入検討の際にご活用ください。
公式サイト・ソースコード(外部リンク)
オープンソースラボの関連ページ(内部リンク)
