HyperDXとは?ClickHouse上で動作するオープンソース可観測性基盤の使い方・導入方法
オープンソースラボ編集部 ・ 2026年10月8日
HyperDXの概要
HyperDXは、ClickHouseを基盤とするオープンソースの可観測性(Observability)基盤です。ログ、トレース、メトリクス、セッションリプレイを一つのプラットフォームで統合検索・可視化できます。Elasticsearchベースの一般的なログ管理ツール(例:Kibana)とは異なり、分析用データベースのClickHouseを活用することで、スケーラビリティと検索速度を実現しています。
GitHubリポジトリはhyperdxio/hyperdx↗で、MIT ライセンスで公開されています。2026年10月8日時点で累計9,937スターを獲得しており、継続的に開発・更新されているプロジェクトです。
主な特徴・できること
統合的なテレメトリー検索
HyperDXの最大の特徴は、ログ・トレース・メトリクス・セッションリプレイをすべて一か所で検索・相互参照できるという点です。本番環境の問題が発生した際、異なるツールを行き来することなく、根本原因を素早く特定できます。
ClickHouse基盤による高速・低コスト
Traditionalな可観測性ツールの多くはログストレージに高額なコストがかかります。HyperDXはClickHouseを活用することで、大規模なテレメトリーデータをコスト効率よく保管・検索できます。READMEでは「engineers to quickly figure out why production is broken」と説明されており、障害対応の迅速性を重視した設計になっています。
スキーマ非依存で既存環境に対応
既にClickHouseクラスタを運用している環境であれば、HyperDXを追加導入する際にスキーマの変更や再設計が不要です。既存のClickHouseスキーマの上に直接ビジュアライゼーション層を乗せるイメージで利用できます。
直感的な検索構文
SQL不要でも利用できるフルテキスト検索と属性検索(例:level:err)をサポートしており、ログ検索に不慣れなチームメンバーでも迅速にデータを絞り込めます。SQL も利用可能で、より複雑な分析も可能です。
OpenTelemetry対応
業界標準のOpenTelemetryに出箱で対応し、JavaScriptやPython、Go、Java、Ruby、PHP、.NET、Rustなど主要言語・プラットフォームからの計測データ送信をサポートしています。ベンダーロックインを避けながら、柔軟なテレメトリー収集が実現できます。
その他の主要機能
- アラート設定:数クリックで本番イベントに基づくアラート設定が可能
- イベントデルタ分析:異常値の傾向を分析するダッシュボード機能
- ライブテイル:ストリーミング形式でリアルタイムログを監視
- APM(Application Performance Monitoring):HTTPリクエストからDB クエリまでのパフォーマンス監視
- CLI ツール:ターミナルから検索・ダッシュボード表示・ログパターン分析が可能な
hdxコマンド
ライセンスと基本情報
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| ライセンス | MIT |
| 開発言語 | TypeScript |
| GitHub Star数 | 9,937(2026年10月8日時点) |
| 公式ドキュメント | ClickHouse Observability Docs↗ |
| コミュニティ | Discord↗、GitHub Issues で活動 |
MIT ライセンスなので、商用利用・改修・再配布がすべて許可されています。企業内での導入でも制限がありません。
導入方法・デプロイ
クイックスタート(単一コンテナ)
最も簡単な方法は、Docker で提供されているオールインワンイメージを使う方法です。
docker run -p 8080:8080 -p 4317:4317 -p 4318:4318 docker.hyperdx.io/hyperdx/hyperdx-all-in-one
実行後、http://localhost:8080 にアクセスするとHyperDX UIにアクセスできます。このイメージには ClickHouse、HyperDX、OpenTelemetry Collector、MongoDB がプリインストールされています。
環境要件
READMEでは最低でも4GB RAM と 2コアを推奨しています。ローカルテストではこの仕様で動作確認が可能ですが、本番環境ではテレメトリーの送信量に応じてスケールアップが必要になります。
ファイアウォール設定
サーバーがファイアウォール の背後にある場合、以下のポートを開放する必要があります。
- 8080 : UI へのアクセス
- 8000 : API エンドポイント
- 4318 : OpenTelemetry Collector(HTTP)
既存ClickHouseインスタンスでの導入
すでに ClickHouse を運用している場合は、HyperDX を別途デプロイして既存クラスタに接続することも可能です。デプロイメント ドキュメント↗に各パターンの手順が記載されています。
ClickHouse Cloud での利用
自社での ClickHouse 運用を避けたい場合は、ClickHouse Cloud↗ にサインアップしてマネージドサービスを利用することも可能です。
テレメトリーデータの送信
HyperDX を導入しても、ログ・メトリクス・トレース・セッションリプレイを送信しなければ意味がありません。HyperDX では以下の方法でデータ送信に対応しています。
公式 SDK
HyperDX は以下の言語・プラットフォーム用の SDK を提供しています。
- ブラウザ(JavaScript)
- Node.js
- Python
詳細はSDK ドキュメント↗を参照してください。
OpenTelemetry 経由
OpenTelemetry の SDK が利用可能な言語・プラットフォーム(JavaScript、Python、Java、Go、Ruby、PHP、.NET、Elixir、Rust など)からは、OpenTelemetry Collector 経由でデータを送信できます。ローカルなら http://localhost:4318 に向けてデータを送信するだけで、HyperDX に自動的にテレメトリーが集約されます。
HyperDX CLI ツール
Web UI 以外の方法として、ターミナル上で HyperDX データを操作できる CLI ツール が提供されています。
インストール
npm install -g @hyperdx/cli
hdx auth login
hdx tui
CLI の主な機能
- インタラクティブ TUI:Vim スタイルのキーバインディングで検索・ライブテイル・トレースウォーターフォール表示
- ダッシュボード出力:ダッシュボードタイルと ad-hoc チャートを ANSI 形式でターミナルに描画
- スクリプト・AI エージェント対応:Raw SQL クエリ、NDJSON 出力、ドレインログパターン分析により、スクリプトやエージェント化に適した形式で結果取得が可能
README のとおり、HyperDX CLI はpackages/cli README↗に詳細な使用方法が記載されています。
活用シーン
本番障害の迅速な根本原因分析
アラートが通知された直後、ログ・エラートレース・ユーザーセッションリプレイを統合検索することで、「何が起きたのか」「どのユーザーに影響しているのか」「どこまで遡る必要があるのか」を数分で把握できます。
パフォーマンスボトルネックの特定
APM 機能を活用し、HTTP リクエストから DB クエリまでのパフォーマンスメトリクスを一覧表示。遅いエンドポイントを特定後、関連ログ・トレースを同じ画面で参照できます。
本番テレメトリーに基づくアラート設定
ダッシュボード上の特定イベント(エラー率の上昇、リクエスト遅延など)に対し、数クリックでアラートルール設定が可能。チームメンバーが個別にアラート設定を担当する手間が削減できます。
マイクロサービスのトレース分析
OpenTelemetry 対応により、マイクロサービス間の呼び出し関係をトレース表示できます。特定のユーザーリクエストがどのサービスを経由したか、どこで遅延が生じたかが視認的に理解できます。
ターミナルベースの運用・自動化
CLI ツール(hdx)を使うことで、シェルスクリプトや CI/CD パイプラインに HyperDX クエリを組み込めます。異常検知や自動レポート生成も可能になります。
デメリット・注意点
ClickHouse の知識が必要な場合がある
既存ClickHouse クラスタを利用する場合、HyperDX は上層のビジュアライゼーション機能ですが、複雑な集計やカスタマイズが必要になると ClickHouse SQL の理解が不可欠です。ClickHouse 未経験のチームは学習コストを見積もる必要があります。
デプロイ・運用の手間
Docker Compose や Kubernetes での本番デプロイには、ClickHouse クラスタの構築・バックアップ・スケーリング戦略など、インフラの知見が求められます。マネージドサービス(ClickHouse Cloud)の利用を検討することで運用負担を軽減できます。
テレメトリー送信側の実装が必須
HyperDX 単体では何も見えません。アプリケーション側に SDK や OpenTelemetry の計測コードを組み込む必要があります。既存アプリケーションへの導入時は、計測実装に相応の工数がかかります。
ストレージコストの管理
ClickHouse は大規模データセットを効率的に保管できますが、テレメトリーの送信量が多いほどストレージ・計算リソースが増加します。データ保持ポリシーやサンプリング戦略を最初から設計すべきです。
商用サポートの制限
オープンソースプロジェクトのため、バグ発生時や緊急対応が必要な場合、デフォルトでは Discord やGitHub Issues でのコミュニティサポートのみです。SLA 付きのサポートが必要な場合は、商用オプションの提供状況を事前に確認してください。
よくある質問
Q: Datadog や New Relic のような商用 APM ツールとの違いは?
A: HyperDX はオープンソースで自社環境での運用が前提になり、テレメトリーデータの所有権が自社にあります。一方、商用 SaaS ツールは運用負荷が少ないかわりにコストが増加する傾向があります。HyperDX は基盤となる ClickHouse のスケーラビリティにより、大量データでもコスト効率を保ちやすい設計になっています。
Q: Prometheus + Grafana との使い分けはどうする?
A: Prometheus + Grafana はメトリクス監視に特化しており、ログ検索・トレース・セッションリプレイ機能がありません。HyperDX は複数種類のテレメトリー(ログ・トレース・メトリクス・セッション)を統合的に扱う場合に適しています。Prometheus でメトリクス取得を続けながら、HyperDX でログ・トレース・セッションリプレイを管理する並用構成も可能です。
Q: 既存ログシステムとの連携は?
A: HyperDX は OpenTelemetry Collector を経由したデータ取り込みに対応しているため、既存ログ収集システム(Fluentd、Logstash など)から OpenTelemetry 形式への変換が可能であれば統合できます。ただし、すべてのシステムに対応しているわけではないため、個別に確認が必要です。
Q: セキュリティ・アクセス管理機能はある?
A: READMEには詳細な権限管理機能については記載されていません。本番環境でのセキュリティ要件が高い場合は、公式ドキュメント↗または GitHub Issues でセキュリティ機能の状況を確認してください。
Q: 無料で使える?ライセンス料金は?
A: HyperDX 自体はMIT ライセンスのオープンソースで、ライセンス料金は不要です。ただし、ClickHouse インスタンス(特にクラウド環境)やインフラストラクチャのコスト、運用人件費は別途必要です。
まとめ
HyperDX は、ClickHouse 基盤のコスト効率的なオープンソース可観測性基盤です。ログ・トレース・メトリクス・セッションリプレイを統合検索でき、本番障害の迅速な根本原因分析を支援します。OpenTelemetry 対応で主要言語・プラットフォームに対応し、Docker での簡単デプロイから既存ClickHouse 環境の活用まで、柔軟な導入が可能です。
一方、ClickHouse の運用知識が必要な場合もあり、テレメトリー送信側の実装工数も見積もる必要があります。自社での ClickHouse 運用が難しい場合は ClickHouse Cloud 利用を、または従来の可観測性ツール(Grafana、Metabase)との組み合わせも検討する価値があります。
導入前には、公式ドキュメント↗で詳細要件を確認し、ライブデモ↗で実際の操作感を試してから、チーム・プロジェクトに適しているか判断することをお勧めします。
公式資料
関連リンク・公式情報
ここで紹介したツールの一次情報(公式サイト・ソースコード)と、オープンソースラボ内の関連ページをまとめました。導入検討の際にご活用ください。
公式サイト・ソースコード(外部リンク)
オープンソースラボの関連ページ(内部リンク)
